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ミルトン
すぐに手錠、足錠をかけられ、パトカーで精神病院に運ばれた。
僕も殴られていて、鼻血が出ていた。
幕張の緊急病院だったと思う。そこに運ばれたのだ。
躁状態なので、頭の中に短歌が浮んで来て浮んで来て止まらなかった。
なんとかこれを書き留めなければならない。
「すいません!紙とペンを貸してください!」と看護師に言った。
「危ないからね、貸せないのよ」と看護師は答えた。
ペンで手首を切ってしまう人もいるからなのだ。
仕方がないので、真っ白い枕に、鼻血で短歌を書き留めておくことにした。
枕に書いた短歌すべてが傑作に思えた。躁状態がそう思わせたのだろう。
そこに若い茶髪の医者が入って来た。男性で、とても痩せていた。
「何してるの?」と医者。
「短歌を書いているんです」
「鼻血で?」
「紙とペンが借りられなかったので」
即興で僕は、医者に短歌を作って言った。
【痩せ過ぎで白衣のあまり似合わない茶髪の医者がやってきました】
「季語がないじゃないか」
「短歌に季語はいらないんですよ。ていうか茶髪は春の季語ですから」
そう言うと部屋にいた看護師たちがどっと笑った。
茶髪の医者は何も言えなくなってしまった。
次の日朝起きてみると、鼻血で書いた短歌でいっぱいだった枕が、真っ白になっていた。
新しいものに取り替えられてしまったのだ…。
今思えば下手くそな短歌だったが、当時は傑作だと思っていたので、悔しくてならなかった。
もう鼻血は止まってしまっていた。
くちびるを噛みちぎって、短歌を書き続けようと思ったのだが、それはやめておいた。
躁状態の時は短歌が溢れるように出て来るものだ。
しかしそれらのほとんどすべてが駄作であることに、最近気付いてがっかりしたのだった。
むしろ鬱状態の時に作った短歌の方が出来がいいのだ。
短歌
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