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きき

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結希✨

佳子

来世はお姫様♪

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きき

にゃ

ハーロック
彼女は、友達に肩を支えられながら、ただ立ち尽くしていた
泣いてもいなかった
叫んでもいなかった
目だけが、燃える家を見つめていた
彼は、何歩か近づいた
声をかけようとした
――なんて言えばいい?
――大丈夫?
――頑張れ?
どれも、嘘みたいに思えた
結局、何も言えなかった
数日後
彼女の家族は、引っ越すことになった
家族を一人、亡くしたと聞いたのは
後になってからだった
最後の日
彼女は、教室の前に立っていた
「今まで、ありがとう」
そう言って、頭を下げた
彼は、席に座ったまま、何もできなかった
見送りもしなかった
その背中が、ドアの向こうに消えた瞬間
胸の奥で、何かが崩れ落ちた
――俺、何もできなかった
――あの時、何も
その夜、布団の中で、初めてはっきりと思った
――次は、つっ立っている側じゃなくて
走る側になろう
「……あの子が、理由です」
彼は、校庭でそう言った
「俺、何もできなかった
だから……次は、助ける側に立ちたかった」
男は、しばらく黙っていた
「自分な」
低い声で、男は言った
「その子の“悔しさ”、ちゃんと背負ってきとるか」
彼の喉が、詰まった
「あの子はな、家だけやない
日常も、思い出も、家族も、全部一気に奪われたんや」
男は続けた
「泣く時間も、整理する時間もないまま
去っていった
自分は、その横で“何もできん自分”を
ずっと抱えてきた」
彼は、拳を握りしめた
「……でも、今の俺、訓練についていけなくて
こんなんで、本当に誰かを助けられるのかって……」
男は、彼の正面に立った
「自分、何か勘違いしとるな」
「……何をですか」
「“強くなったら助けられる”んやない
“助けたい”が先にあったから、ここまで来たんや」
男は、彼の胸のあたりを、指で軽く叩いた
「ここに火があったから、試験も、地獄の訓練も、越えてきた」
彼の目に、涙が滲んだ
「でも……今、苦しいです」
「当たり前や」
男は、はっきり言った
「自分はな、“あの子の時間”を背負って走ろうとしとるんや
そら、楽なわけない」
一瞬、校庭に風が吹いた
「自分が今、挫けそうになっとる場所
そこはな、あの子が一人で立ち尽くしてた場所より、ずっと前や」
その言葉が、胸を貫いた
「自分は、もう走っとる
あの時、立ち尽くしてた自分とは、違う場所におる」
彼は、空を見上げた
少しずつ、夜が明けてきていた
「……俺、逃げたいって思いました」
「ええ、逃げたいて思ってええ」
男は言った
「でもな、逃げたいと思えるほど、本気でここに来たっていうことや」
遠くで、号令の準備の音がした
「最後に一つだけ、思い出せ」
男は、静かに言った
「あの子が、最後にどんな顔しとった」
彼の脳裏に、はっきりと浮かんだ
泣いていない顔
でも、泣けなかった顔
「……笑ってました
無理して」
「せやろ」
男は、ゆっくり頷いた
「自分が目指しとるのはな
あの子に“無理して笑わせんでええ場所”を作る仕事や」
胸の奥で、何かが、ぱちんと音を立てた
消えかけていた火が、もう一度、息を吹き返す
「行け」
男は言った
「しんどい時ほど、前に出ろ
自分が立つ場所は、あの子の“悔しさ”の一歩先や」
号令が響いた
彼は、ヘルメットを手に取った
立ち上がると、足の震えは、まだあった
でも、逃げたいとは思わなかった
振り返ると、黒い服の男はいなかった
ただ、胸の奥に、確かな熱だけが残っていた
――次は、必ず、間に合う
二十二歳の彼は
もう一度、走り出した
これは、逃げなかった一人の少年と
今も誰かの人生を背負って走ろうとする
一人の消防士の、再点火の物語だ
#希望 #自作小説

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