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天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第三十話 後編

やれやれと頭を振るたった1人の女騎士に、周囲の魔族はどう手を出して良いのか分からず、まるで時間が止まったかのように微動だに出来ない。
ルーヴェリアは思った。
50年前の魔族の方がまだ気概があったし頭も良かったしずっと強かった、と。
ルーヴェリア「そこのお前」
隙のなさに攻めあぐねている適当な吸血鬼を指名する。
吸血鬼「え、あ、俺?」
ルーヴェリア「この軍の数は10万で合ってるな?」
唐突な確認に吸血鬼は戸惑いながら頷く。
ルーヴェリア「正方形に整列し進軍していたが、私が中央に来たため列が乱れ、円形になっているな。この先の山は道が険しいうえ高木も乱立しているから翼は邪魔になる。崖も多いが谷も多いために、巨人が居ては思うように進軍出来ないだろう」
広域索敵の魔術で概ねの現在の陣形、どこからどこまでが陣地になっているのかを把握し、地面に魔力を流し込んでいく。
向こうからすれば謎にアドバイスをしてくれる隙の無い女騎士(敵)でしかないので、その話の最中に罠をかけられているなんて思いもしなかったろう。
ルーヴェリア「ましてや相手は30年以上続いたあの大戦の生き残りでお前達が…あー…七星だったか。そう崇める存在全員に致命傷を与えた人間だ。私の屍を踏み越えて進軍できると思うか?素直に身を引いて魔界で末長く幸せに暮らした方が良いと個人的には思うんだが…お前達はどう思う?」
動揺して顔を見合わせる吸血鬼や翼人達。
そして話を理解しているのかすら不明そうにしている巨人の群れ。
ルーヴェリアは呆れてものも言えなかった。
吸血鬼「ゲートを開いて帰ると言ったら、見逃してくれたりするのか…?」
先ほどルーヴェリアに指名された吸血鬼が、嗄れて骨ばった手を組みながら物腰低く尋ねてくる。
ルーヴェリアはこくり、と頷いた。
吸血鬼は、ならば帰ってしまおう。
殺さなくても良いとレイヴ様が言ったんだ。
ここで命を捨てるくらいなら、魔界に帰って平穏に暮らしたい。
自分達だって、戦争をしたくて来たわけじゃないんだから、と周囲の者を説得し始めた。
周りがそれに賛同してゲートを開き始める者まで出てくる。
ただ1人、微動だにせず鋭い視線を送り続けている小柄な翼人を覗いて。
誰かが言った。
ゲートが開くぞ、と。
その瞬間、地面から無数の槍が突出して魔族らの心臓を串刺しにし、彼らは宙に浮いた。
開きかけたゲートが閉じる。
巨人も複数の槍に刺されて、逃れようと動けば動くほど、槍は更に食い込み、新しい槍が体内で生成されて突出する。
降り頻る血の雨を浴びながら、まるで化け物でも見たかのような表情をする先程の吸血鬼を見た。
ルーヴェリア「なんだ、驚いた顔は人間とそっくりだな」
ヘルム越しに聞こえてくる悪魔のような女の声に、吸血鬼は何故こんなことを、と辛うじて口に出した。
ルーヴェリア「何、簡単なことだよ」
わざと狙わずに残しておいた先程の小柄な翼人の元へと歩きながら、すれ違いざまに囁いていく。
ルーヴェリア「魔族は約束を守らないだろう?」
それが吸血鬼が死ぬ前に聞いた最後の音だった。
翼人は憎しみと殺意の入り混じった目でルーヴェリアを睨み、手に持っていた剣をルーヴェリアに向けて構えた。
魔族と人間では時の流れ方が違い、あちらで数十年と生きても、こちらから見たら1つか2つ歳が変わる程度だ。
翼人が小柄なのは、まだ幼い姿をしているから。
ルーヴェリア「子供まで戦に駆り立てたのか、あの屑は」
ルーヴェリアの言葉に翼人は、翼人の子供は食ってかかった。
翼人「魔王様は屑なんかじゃない!こんなことするお前らの方が悪い奴なんだ!戦いには自分から行くと言った!俺の両親はお前に殺されたんだ!」
走り込みながら大きく振り被った剣を振り下ろすが、粗雑で隙だらけの動きでルーヴェリアに一太刀浴びせることなんて出来るわけもなく。
軽く体の軸をずらす程度で躱されたうえ、背中を蹴飛ばされて仲間の死骸が突き刺さる槍に激突した。
翼人「俺の父さんも母さんも、こんな風に殺したんだろ!騙して、殺したんだ!」
頭から血を流しながら、子供は怯まず騎士に飛びかかる。
ルーヴェリア「ちゃんと斬って殺したと思うが。騙し討ちなんてしていられるような戦争じゃなかった。姿が見えたら何がなんでも殺しにかかってくるような戦いだった。今回のような腑抜けの集まりなんかじゃなかったぞ」
ルーヴェリアは自分の横をすり抜けていく子供の手を軽く引っ叩いて剣を落とさせた。
落ちた剣を拾ってから攻撃するのでは遅いと判断したのか、翼人は素手でルーヴェリアに挑んでいく。
翼人「みんな家族のために戦いにきたんだ!こんな風に死ぬことより家族を選んで帰ろうとしたのに、お前はみんなを殺した!」
右手で殴りかかりにきた子供の手首を掴んで持ち上げ、地面に叩きつける。
背中を強く打ち付けて、かはっと言う声と共に血飛沫を吐き出した。
霞む視界に、自分を見下ろす人影と、串刺しにされた仲間達が血の雨を降らせる様が見える。
人影は、ルーヴェリアは子供の頭を踏み潰した。
ルーヴェリア「それが戦争というものだ。来世に活かせ」
無慈悲にも死んだ後にそう告げてやるのは、もしかしたら少しの罪悪感か良心なのかもしれない。
ルーヴェリア「……殺し殺され、奪い奪われ…か」
人も魔族も変わらないな、と自嘲気味に呟く。
もう少し長く保つと思っていたが予想外に短い戦いになってしまった為、これから旧メレンデスの方に移動しなければいけなくなってしまった。
が、その心配は無用だったらしい。
自分の軍を捨て置いてきたのか、ノクスとレイヴが並んで死骸が乱立する様相を見て唖然としていた。
唯一串刺しにされていない子供は、ルーヴェリアの立ち位置から頭を踏み潰され殺されたことが一目瞭然。
レイヴ「おいおい…慈悲って言葉知ってるか…?」
ノクス「僕らがそれ言う?」
ルーヴェリアは内心で頭を抱えた。
本当は心底同意したくないが、ノクスと全くもって同意見だからだ。
数秒の沈黙が両者の間に流れた後、口を開いたのはルーヴェリアの方だった。
ルーヴェリア「それで、何故魔力封じが通じないのか直接見にきたというわけか」
ノクス「……概ね予想はついてる。魔装具が原因かな」
ああ、舐められたものだ。
ルーヴェリア「この魔法円を設置したのはいい策だったと褒めておこう。が、私の魔力を封じるなら七将5人がかりで作るんだったな」
ノクスもレイヴも、怪訝そうな顔をする。
ルーヴェリア「魔力封じはな、魔力を封じる側が封じられる側を凌駕していなければ成立しない」
2人ははっとした顔でルーヴェリアを見た。
明らかな動揺が窺える。
やっと気がついたか。
ノクス「まさか…僕ら七将よりも…」
レイヴ「魔力量が…上…?」
ルーヴェリアは頷きながら剣を構え直した。
こうなってしまった以上、やるしかない。
先走って来た為援軍の到着まで1時間はかかる。
ノクスの力でここにある同胞の死体を操っても保つかどうか分からないが、それでもやるしかない。
この女を此処に留め続けるのが自分達の役目だから。
串刺しにされた翼人や巨人達が再び動き出し、自ら槍に刺さりにいって地に足をつけ、己の体が裂けることも厭わず抜け出してきた。
その傷はみるみるうちに回復していくのが見て取れる。
頭を潰されたあの子供も、頭は再生しないが起き上がってルーヴェリアの方を向いた。
相変わらず気色の悪い術だ。
ルーヴェリアは剣に蒼焔を纏わせた。
戦いは、これからだ。
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きんお

きんお

うーん、スカウトなんて手当たり次第に声かけて、その中から光る人をチョイスして、更にその中から売れる人が出てくるかどうかって話じゃないの? スカウトされたらからといって即売れるとは限らないしね。社長の言ってる事を信じちゃうかな。 #so954
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サーテ

サーテ

本日はライさんに感謝してる日ですw
静音ポチっとな♥
ottoから完全丸ガイド出ないかなぁ?てか8角ガイド以外なんで単品販売してないのよ!
8角ガイドなら出てるけどライさんは試して無いかな?
より丸に近いのはどっちだ!
普通の8角はカタカタ感じて気持ち悪いのよね。
グリグリ回したい。
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とぅー

とぅー

昼休憩、今日の午前中は時給の割に合わない作業をした。いや、させられた。今日の作業はハズレ。ストレスで昼飯も入らない。そもそも左利きの人間に右利き用のカッターを使う作業は余計に力が入るし神経さえ使うのだ。はあ疲れた。でもまだまだ昼からがある
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あいの

あいの

失ってしまった物って、特別な宝物だったと感じて辛くなってしまう事あるよね。でも、今残されたものでもっと特別な宝物がある事を忘れないでね!その今ある宝物を大事に出来れば、失った辛さだって乗り越えられるよ!
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にゃん

にゃん

私は「あんたってブッ飛んでるよね(ーー;)(汗)」って言われる事が結構ある(笑)でも、周りに合わせてツマラン人生送る位なら、一度の人生思う通りに生きたいよね。サーフィンに行って、波がない海程イケテナイものもないけど、人生だって波がなきゃ、楽しめないよ☆゚.+:(oゝω・o).+
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りこ

りこ

最新話の謎の少女、何なんだろうなと思ってたけど、ザイの中の人ネタ説を見て目眩がした(某五つ子のラブコメ)
作品とか元ネタになりそうな存在とかちゃんと知らなかったんだけど、画像見たら有り得そうでワァ……ってなった
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こだ

こだ

痛いのや怖いのが嫌だから逃げ回るのではなくて、そういう嫌なものにこそ敢えて正面からぶつかって突破すべき。仮に傷付いたとしたって、致命傷を蒙らなければ、もっと強くなっていつか克服できる時が来るはずだから。負け犬なんかになってちゃ勿体無い。喰ってやればいい。
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ちの(弐

ちの(弐

某お給仕バンドなんか、海外ファンの転載リアクション動画もやんわり肯定してるし(多分)、
もはや好意的でさえあれば限りなく薄いグレーにして、
その代わり宣伝やファンダムの盛り上がりを取ってる感じするし。(それでもたまにbanはあるっぽいけど)
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つっき

つっき

せっかくの素敵な四季、春は「また1年経っちゃった」夏は「暑くてうんざり」秋は「寂しい」冬は「凍えるな」なんて事だけ思ったらもったいないよ!春は明るい花を、夏は輝く海を、秋は素敵な紅葉を、冬は綺麗な雪を楽しんでいけたら、きっと今よりも楽しく幸せに過ごせるね!
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🍉ユン

🍉ユン

個人的な解釈だけど、プラダの靴がほしいってのは具体的に言われたことではなく、来るべき出逢うべき恋人はそう言うだろうと想像して街にくり出す…という話だと思ってて、だからこそ主人公かわいいねって話なんだけど。で、やっぱり喜びを分かち合うんじゃなくて“分かりあう”ってとこが凄いし大共感。
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