実弟とはいえ養子に行った万次郎が蔦屋の抱えを引き抜いたと聞いて、弟には内緒で蔦重に金々先生の板木を譲る長兵衛兄さんは本当に人間ができている。思えば自分の所の丁稚ですらない、おつかいで一時期店に出入りしていただけの唐丸の顔と名前をちゃんと覚えていた男だったね。