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天月 兎
第二十七話 前編
サフラニアが攻勢に出てから約2日後、アドニス率いる第一騎士団は帰還した。
クレストはその1日後に。
重たい音を立てて玉座の間の扉が開かれ、2人の騎士団長は国王の前に跪く。
曇天で充分な明かりが得られないせいか、室内は少し暗く、空気も重たく感じられた。
国王は2人の帰還をまず労ったが、その後すぐに眉を顰める。
国王「…アドニスの援護に向かった筈のルーヴェリアはどうした」
アドニス「…七将の襲撃に遭い、現在交戦中です」
その場に集まった者たちがひそひそと話し始める。
七将相手にたった一人置いてきたのか、王子もあの化け物に洗脳されてしまったのか、と。
国王の咳払いでそれらは口を閉じた。
国王「…まずは、第三騎士団を率いてたった1人帰還したお前の話から聞かせてもらおう」
視線を向けられたクレストは頷き、掲げていた少し大きな袋から首から上の無い人の形をした、それでも背中には虹色に輝く鱗に覆われた翼を生やしたものを転がした。
国王「それは?」
クレスト「七将が1人、祖龍セレシュバーンの死骸でございます」
クレストを除くその場の全員が息を呑んだ。
獣祖ザルヴォ、植祖シルヴェーラに続き、祖龍セレシュバーンまで。
この国は戦争と悪天候で衰退してきてはいるものの、確実に勝利へと歩んでいると、周囲の人々の目には希望という名の輝きが宿りつつあった。
クレスト「死骸を持ち帰ることは出来ませんでしたが、祖態ミュルクスの襲撃にも遭い、応戦、ゲートの破壊と共に討伐しております。その戦いにて出陣した第三騎士団の生き残りは、私一人となりました。ただ、当初より正規の騎士団ではなく、私兵を主として編成していたため、城内には未だ私の部下が一万ほど控えております」
国王はふむ、と頷いた。
私兵というのは恐らく、クレストが運営していた戦災孤児達を育てていたところだろう。
出立時、騎士団にしては少し数が少ない気がしたのはそういうことだったようだ。
何十年も前の戦いで家族を失った者達は、互いに身を寄せ合いながら、その憎悪を糧に鍛錬に励み、ついに私兵として戦場に赴いて散っていったのか。
国王「慰霊碑に、花を添えねばならないな」
クレスト「お気遣いいただき、感謝いたします。帰還道中、テフヌト族領の村々を見て参りましたが、魔獣の群れに蹂躙されたのか、家屋は崩れ去り、息のある者は誰1人として残っては居りませんでした」
脳裏に過ぎる光景は、凄惨を極めていた。
石を積み上げて造られた家屋らが、まるで道端に転がっている石ころのようにしか見えない。
その下から覗く、何かを求めるように必死に伸ばされたのであろう手や、切断された何者かの脚や頭が転がっており、それらには老いも若いも、男も女も関係なく。
ただ、そこに転がされていた。
血液が飛び散った様子がないあたりを見るに、魔獣だけの襲撃でもなく、恐らく吸血鬼あたりも絡んでいたのだろう。
死体を残しては、悪用されるだけだ。
クレストは己の力で出来うる限りの遺体をかき集め、火炎の魔術で骨にすると、今度は遺骨に鉄球を振り下ろして粉塵に変え、風に流した。
だから少し、帰還が遅れてしまったのだ。
国王「…ふむ。アドニス、お前は如何だった?」
アドニス「私は…」
彼は自分が見たものを正直に答えた。
第一王子ヴィリディスとその護衛騎士ケインが屍人となって襲ってきたこと、地面から無数の巨大な屍人が現れて騎士団を圧倒したこと、そして、ルーヴェリアが駆けつけた途端、魔族を操っていたノクスは逃げ果せ、何とか敵を凌いだことを。
だが、問題はその後だった。
降り続ける雨。空はもうじき晴れるはずなのに、天空に開いた穴はまた閉じて激しい雨を降らせた。
水溜まりが流れ、死者の血液が溶け出して血の川を成したところで、ルーヴェリアはアドニスに言ったのだ。
ルーヴェリア「この雨には、魔力が込められています。恐らく水魔を呼び寄せるつもりでしょう。そして、本来水場のない平原でそれが出来るのは、七将セラフィナだけです」
知っている。本で読んだ、あの水祖セラフィナだろう。
凄まじい魅了術と幻術、そして、全ての液体を操る力を持つ七将だと聞いた。
アドニス「すぐに防衛体制を…」
ルーヴェリア「いいえ。騎士団の中にあれの魅了術に耐えられる者は数少ないはず。私が対応しますから殿下は第一騎士団の生存者全員を引き連れご帰還を」
たった1人で七将を相手にするなんて無茶がすぎる。
まだ仲間の遺体も処理できていない中、ノクスまで戻ってきたら。
どうするのか、と問うアドニスに、ルーヴェリアはヘルム越しにふっと微笑んだ。
ルーヴェリア「ご安心を。私が死ぬことは決してありません。魅了にかかることもない。ノクスが現れたとしても同じです。私に残された魔力は、大軍を相手にするには少し足りませんが、ただそれだけです」
予め用意した小爆発を起こさせる魔道具やら何やら、色々と持ってきたから、と。
必ず敵の首を獲って帰ると言われ、アドニスは言い返すこともできず、軍を率いて帰ってきたというわけだ。
国王「……ふむ」
待つべきか、援軍を送るべきか、しかしルーヴェリアの言葉が本当ならば、果たして援軍を送ったところで足手纏いになるのではないか。
結局彼女が帰還するまで、国王や騎士団長らは待っていることしか出来なかった。
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なす

ken

鵺さん
明日は来るよ、キミの為に🎶
先程、ラジオから流れてきた一曲。
休日に入った、明日の欠勤連絡に怯えない責任者が居るとでも!?
何が「明日はくるよ、君のため」だ!!
良い曲なのに、今夜だけは憎い!!
おやすみ!!
💢:( ;´꒳`;):💢💢
TOMORROW
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のりし

ぐらす

結 。
#フェイクマミー

大西茉

ときま
#みんなで追いミーツ
#サクラミーツ
#TVer

まる☺

とまり

あかい

くんも
背面ボデープレスの威力値を引き上げたことを除けばな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ぼろし
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