彼岸花とモデルと日本ぽい風景｜きよてつの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

※ この作品(自作小説)には自傷に関する描写があります
今つらい方は、無理せず読み進めてください

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第二話 (全二話)

一つ目
傷を「罪」から「記録」に戻す

「汚い」「終わり」ってラベルを貼るな
それは自分に貼られた呪いや
記録に戻せ

「この傷は、あの時の自分が、生き残るためにやった」
それだけでええ

「見られたら、短く言えばええ」

しんどい時期があって、自分を傷つけてしまいました
今は回復の途中です

説明は盛らん
言い訳もしない
“今は回復の途中”——これが未来の扉や

二つ目
均等を取る道具を増やす

「自分がやってきたのは、均等を取る技術や
ただ、道具が一個しかなかった
それが問題や」

男は、短い手順を渡した

・衝動が来たら、誰か一人に短文を送る
　「いま危ない
話さなくていい
つながっててほしい」

・冷たい水で手首を冷やす／温かい飲み物を飲む

・食べられない／止まらないが続くなら
体の問題として扱っていい
心の根性の問題やない

「間に合う時もある
間に合わん時もある
でもな、“間に合う確率”を上げるのが回復や」

「回復ってのは、完璧になることやない
戻って来れる回数を増やすことや」

その言葉が、彼女の胸に深く刺さった

彼女は震える声で言った

「私、いつか結婚して、子どもができたら……
この傷のこと、聞かれたらどうしたらいいんだろう」

男は静かに言った

「その未来、ええやん
ほな、未来の自分の言葉、ここで作っとけ」

昔、すごくつらい時があって、自分を傷つけてしまったことがある
でも今は、助けを求めることを覚えた
もしあなたが苦しくなったら、先に私を呼んで
一人で抱えなくていい
私は味方だよ

彼女の目から熱い涙が溢れた
それは惨めさの涙ではなかった
未来に渡せる言葉ができた時の涙だった

「助けは負けやない、技術や」

男はスマホを指さした

「もし今、この文章が“他人事じゃない夜”に届いているなら——
短くでいい、つながってほしい」

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相談先（日本）

・#いのちSOS（24時間）0120-061-338
・よりそいホットライン 0120-279-338
・こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
・TELL Lifeline（英語対応）0800-300-8355
※ 差し迫った危険がある時は 119 / 110

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彼女は袖をゆっくりまくった
鏡の前で、腕が見える
怖い
でも、逃げない

「それは終わりちゃう
ここまで生きてきた証拠や」

彼女は、鏡の中の自分を見た
傷はある
でも、その奥に、まだ生きている目があった

「……私、これからでも間に合う？」

「間に合う
ただし条件がある」

「一人で均等を取ろうとするな
次の夜からは、“つながって均等を取る”に変えや」

彼女はスマホを握り、一番信頼できる友達に、短く打った

「いま、ちょっと危ない
話さなくていい
つながっててほしい」

送信

世界がすぐ変わるわけじゃない
でも“助けを使った”という事実は残る

その事実は、彼女の魂の背骨になる

「……私、弱いのに、今日ちょっと強い」

「それでええ」

「強さはな、痛みに勝つことやない
痛みを抱えたまま、明日につなぐことや」

傷は消えないかもしれない
でも、彼女の人生は消えない

救いは奇跡じゃない
練習の積み重ねだ

#希望 #自作小説

※ この作品(自作小説)には自傷に関する描写があります
今つらい方は、無理せず読み進めてください

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第一話 (全二話)

夜は、人を追い詰める

海じゃなくても、夜ってやつは人を追い詰める

19歳の彼女の部屋は、スマホの光だけが明るかった

両腕の内側は、まだ“過去”になりきれていなかった
傷は盛り上がって、消えない形になっている
見るたびに、胸がぎゅっと縮む

「汚い」という言葉が、勝手に浮かぶ
そのたびに食欲が消えて、次は逆に、止まらなくなる夜が来る

——落ち着きたいだけ
——息がしたいだけ
——生き延びたいだけ

分かっているのに、誰にも言えない
言った瞬間に「やめなさい」「そんなことしたらダメ」と返ってくるのが分かるから

正しさで殴られるくらいなら
一人で黙って崩れた方がマシだと思ってしまう

その夜、彼女は洗面台の鏡の前で、袖を引っ張り直した
隠す動きが、もう呼吸みたいに自然だった

「……私、何してるんだろ」

声が震えた

「自分、生き延びとるだけや」

背後から声がした

振り向くと、黒い服の男が立っていた
でも彼女は驚かない
驚く力が、もう残っていなかった

「……誰」

「ただの通りすがりや
ワシは説教しに来た
けどな、最初に言っとく」

男は彼女の腕を見なかった
見ないことで、彼女を“物”にしない距離を保った

「それは恥やない
自分が壊れそうな中で、生き残った手段や」

彼女の喉が詰まった
初めて、そこを否定されなかった

「でも……消えない」

「消えへんかもしれん
消えないものがあるのは、この世の普通や」

男は水道の蛇口を指さした

「自分は今まで、“痛み”で均等を取ってきた
せやから、いきなり『やめろ』は無理や
無理なことを“理想”にすると、また自分を殴る」

彼女は、涙が落ちる前に笑った
笑いというより、息漏れだった

「じゃあ、どうしたらいいの
私、もう普通に戻れない」

「戻らんでええ」

男は淡々と言った

「自分は壊れた人間やない
今までのやり方が、限界に来てるだけや」

“限界”という言葉が、なぜか救いに聞こえた
限界なら、変えられるかもしれないから

男は指を二本立てた

「今日から覚えるのは、二つだけや」

#希望 #自作小説