生きた心地がせえへんけど、めちゃくちゃ大切な人が支えてくれる。ほんまにありがとう。

こんばんは宇宙。

イグアナ家のスイーツ担当は、花の女子大生。
大学のお友達と体験教室に行ったと、ガラス細工のピアスの写真が送られてきた。

地中海の海のような青に、
白い小花が几帳面に散りばめられた、
聡い彼女らしい、大人びた配色。
どこかしら懐かしい感じもして、
浴衣にも似合いそうだねと、返信した。
何より彼女が大学でプライベートを共にする友達ができたことが、嬉しかった。

それからそう日にちが経たないうちに、ピアスを落としたと、通学路を逆戻りしてさがしていると、連絡がきた。
途中寄ったカフェや百貨店、駅でも聞いてみたと、書いてあった。必死な背中が目に浮かぶようだった。

神様の意地悪、とイグアナは思った。
中学高校と、人間不信になるほど
過酷な扱いを受けてきた彼女が
初めてクラスメイトと過ごした休日。
一緒に作った思い出のピアス。

結局ピアスは見つからなかった。
かける言葉が見つからず、
今度一緒に作りに行こう、と言った。
イグアナ大好き、と彼女は言った。
こんな時まで気を遣って。
本当はイグアナではダメなのに。

それからしばらくの時がたった。
伊豆をぶらぶらしている時、
立ち寄った小さな駅の2階で、ガラス細工のワークショップが開かれていた。色とりどりのガラスに、金太郎飴のような小さな花たち。

はっとした。
ミルフィオリ、という耳慣れない単語に覚えがあった。陳列された作品を見て、確信した。

優しそうなおじいさんが、
小さければ耳飾りから作れるよ、
と声をかけてくれた。
扇風機の風がゆるく顔に当たる。
汗がこめかみから流れる。
ピンセットでひとつひとつ、花を載せていった。彼女が作ったものとは、大分違う、と思った。
2週間程でお届けできますから
とおじいさんは言った。

出来上がってきたものは、
イグアナの予想通りかわいくて、
予想通り不恰好だった。
喜んでもらえるだろうか。
どちらにしろ、代わりにはならないけれど。
それでも。