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タケ
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真夏の午後、香織は図書館の窓際で詩集を読んでいた。外の空は眩しいほどに青く、まるで冷たい炭酸水を注ぎたくなるような楽園の色をしていた。
なにゆえのこのあわただしさぞ
周囲では受験生たちが参考書を開き、ペンを走らせている。夏休みだというのに、誰もが何かに追われるように勉強している。香織自身も進路について考えなければならない時期だった。
窓の外を見ると、図書館の入り口付近に一匹の猫が見えた。黒と白の毛色をした、涼しげな猫だった。猫は建物の影に身を潜め、まるで「入口のない影の国」の住人のように、静かにそこに存在していた。
香織は席を立ち、外に出た。アスファルトの表面はざらついていて、無機質な肌理が足の裏に伝わってきた。猫に近づくと、それは警戒することなく香織を見上げ、ゆっくりと影の奥へと移動していく。香織は猫について歩いた。
気がつくと、香織は海岸にいた。猫はもういなかった。
波が静かに砂浜に打ち寄せている。その度に、砂に刻まれた足跡が消えていく。香織自身の足跡も、他の誰かの足跡も、波は分け隔てなく消し去っていく。
「残酷なほどに優しい」
香織はその様子を見つめながら思った。波の調べは美しく心を癒してくれる。しかし同時に、すべての痕跡を消し去ってしまう残酷さも持っている。
それでも、香織が求めていたのは、まさにこの感覚だったのかもしれない。すべてを白紙に戻してくれる、やり直しの機会。進路のこと、将来のこと、周囲の期待、そして自分自身への不安。すべてを一度リセットして、もう一度歩き始めることができる場所。
夕日が海を染め始めた頃、香織は図書館に戻った。あの黒と白の猫は、まだ同じ影の中にいた。今度は香織を見て、小さく鳴いた。
「ありがとう。道案内してくれて」
香織は猫に微笑みかけた。猫は一度振り返ってから影の奥へと消えていった。
外では夏空がまだ青く輝いている。香織は深く息を吸い、新しい一歩を踏み出す準備ができたような気がした。
あの「入口のない影の国」は、実は誰の心の中にもあるのかもしれない。大切なのは、そこを通り抜けて、再び光の世界に戻ってくることなのだろう。
波が足跡を消し去るように、古い自分を手放し、新しい自分を見つけた夏の一日だった。

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岬ロカ

ゆうき
ということでダイソーから人感センサーの充電式のLEDライトを買ってきました。洗濯機のフタに取り付けました。置き場をいろいろ試した結果、この位置がベスト。よく見えるようになりました☺️


ひめこ
配布の前に先ずは簡単な自己紹介からお願いできますか?
性別、年齢、登録都道府県を教えてください。
匿名性を守る為にあなたからの質問にはお答え兼ねるのでご了承ください。
必ず自己紹介からお願いしますm(__)m

ゆぅ

のりた

ごまご

にゃち

えいえ
利用者にも作家にも嬉しい電子書籍サービスがあるならそこに乗り換えてみようかと思うけれど、そんな好都合なサービスがあるのかしらん?

幾果

ひめこ
まず
1.毎月月末に50万円(初回のみ先払い)
※計600万円
2.不動産売却益の一部として【3000万円】(冬までに売却が決まっているので配布時期はそれ次第)
以上になりますがこの内容で受け取り希望される場合のみ下記受け取り窓口で申告してください。
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