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けん
『穴と背中』
木が見える。いや、あれは森か。私は昼休憩だったはずだ。
森は赤や青に変化する。光ではなく、空気の色が変わっている。怖くはない。どこか懐かしい。
足元に道のようなものがある。幅50センチ。人一人ぶん。まっすぐ奥へ続いている。
私は歩き出した。
まるで、地面の小さな穴を覗いたら、自分の背中がこっちを向いていたので、なにも言わず落ちていくようなものだった。
比喩にしては妙に具体的で、どこかで体験した記憶がある気がする。
逆向きに歩く夢を、たしか何度も見た。
木々の幹には小さな目。まばたきをしない。
風音は「カサ」ではなく、「カ」が先で「サ」が遅れて届く。
私の靴音は聞こえないが、同じ歩調の足音が数歩後ろから追ってくる。
思考を止めた。
考えると意味が通る。意味が通ると、世界の歪みがはっきりしてしまう。
夜と朝は3回訪れた。夜は白く、朝は黒かった。
5回目の朝、木の根元に封筒。
中には私の履歴書。「最終処理済み」のスタンプが押されていた。
そのとき、私は自分の名前を思い出した。
だがその名は、すでに意味を持っていなかった。
振り返ると、穴があった。
中では、こちらを向いた私の背中が、また立っていた。
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