分かんないけど私はアニメ見たり漫画読んだりしたいからとりま生きてる。

#怖い話

「バックヤード」①

私が高校１年生だった冬のことです。
奨学金をもらってはいたのですが、家庭の事情で学費の支払いが厳しくなり、初めてアルバイトをすることにしました。
私の下にはまだ弟も妹もおりましたので、「弟と妹の将来のために、私が家のお金を使い切る訳にはいかないなぁ。」と思ったのです。

幸い、近所に大型ショッピングモールが出来たばかりということもあり、アルバイトはすぐに決まりました。
リブランという、富山銘菓を扱うお店です。初めてのアルバイトだったので、とりあえず冬休みに短期集中でやってみて、続けられそうだったらそのまま続けようと思っていました。

仕事の内容は、繁忙期であるクリスマスから年末年始にかけてひたすらバックヤードで箱を折り、お菓子を詰め、熨斗（のし）をつけ包装して菓子折りを作るというものです。
バックヤードに暖房はなく、薄暗く、箱詰め作業をするスタッフは私だけという、なんとも地味なアルバイトでした。

それにしても、こんなに菓子折りって売れるのだなぁと感心してしまうほどの量でした。
毎日朝から夕方まで作業しても、「もう作らなくて良いよ。」とはならなかったので、私が作ったものは、ほとんど売れていたのだと思います。

箱の種類もお菓子の種類も多くて、指示書を見ながら「○号の箱に甘金丹（菓子の名前）が3つ、富也萬が3つ、茶茶丸チョコ丸が2つずつで、ダックワーズを真ん中に4つ詰めて熨斗なし包装、包装用紙は△△で20箱……。」など、確認しながらひたすら手を動かす作業でした。

たまに店長が来ては、「次はこのセットをお願いね。」と指示書を渡してくれます。
出来上がったものを店頭まで届けるまでが、私の仕事でした。お店はいつ見ても行列が出来ていて、驚くほど繁盛しています。
（裏と表じゃ別世界だなぁ……。）と、眺めながら感心していました。

その日もいつものように出勤し、バックヤードで箱を折っていました。
作業にもすっかり慣れ、頭の中では昨日見た漫画を脳内再生しながら、ひたすら手を動かします。
（あれ？指示書通りに作るには材料が足りないな……。）
ふと気が付いて、手が止まりました。
念のため、その場から離れ周りを隈なくチェックして、本当に材料がないかを確認します。

その時、

「美味しそうだなぁ。」

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