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詩音

詩音


「千鶴?」

「な、なに?」

「お前さ、最近親父に妙に緊張してない?」

「そ、そんなことないよ!」

 千秋はじっと千鶴を見つめた。
いつも軽い調子でふざける彼が、今は真剣な表情をしている。

「……お前、親父のこと好きなのか?」

「――!」

 心臓が大きく跳ねる。

「ち、ちが……!」

「嘘つけ。お前、親父と目が合うとすぐに顔赤くするし、前より大人しくなったし」

「ち、違うの! ただ、その……助けてもらったから……」

「それ、本当に“好き”ってやつか?」

 千秋が静かに言った。

「え?」

「俺さ、ずっとお前が好きだったんだよ」

 千鶴の息が止まる。

「子どもの頃からずっと、お前が好きだった。でも、俺なんかじゃダメか?」

 千秋の目が真っ直ぐに千鶴を見つめる。
その瞳の奥には、ふざけた態度の裏に隠していた本当の想いがあった。

「千秋……?」

「俺じゃダメなら、ちゃんと振ってくれ。
でも……もし迷ってるなら、少しは俺にもチャンスをくれ」

 千秋の言葉が心に響く。

 ――私、本当に父さんのことが好き?

 たしかに憧れはあった。
でも、それは「好き」ではなく「尊敬」に近い気がする。
心の奥底で、本当に一緒にいたいと思っていたのは――。

 目の前にいる、この人だった。

「……千秋」

 千鶴はゆっくりと口を開いた。

「私、たぶん父さんのことを“恋”だと勘違いしてた。でも……本当に好きだったのは、ずっとそばにいてくれた千秋だったのかもしれない」

 千秋の目が驚きに見開かれる。
そして、ゆっくりと笑った。

「そっか……。じゃあ、これからは“兄妹”じゃなくて、ちゃんと“恋人”になれるように頑張るわ」

 千鶴は真っ赤になりながらも、小さく頷いた。

 波音が静かに二人を包み込む。
 夏の海に、淡い恋が実った瞬間だった。
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コメント

ダリオ🐈‍⬛ブランドー🐾

ダリオ🐈‍⬛ブランドー🐾

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面白かったです!キュンとなりましたね!

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詩音
詩音
ありがとうございます😊 実際にあり得そうな恋かもしれませんよねー[笑う]
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ヒロシ

ヒロシ

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うわぁーまさかの展開💦

返信
詩音
詩音
どちらにしても、結ばれない恋ですよね〜、多分…[泣き笑い]
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