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詩音
遠い昔、天空と大地の境界にある
「二面の世界」
と呼ばれる場所があった。
そこには、光が満ちる「光の谷」と、
闇が覆う「影の森」という
二つの対照的な領域があった。
光の谷に住む人々は、
いつも温かな陽光を浴びながら
幸せに暮らしていた。
しかし、彼らは影の森を恐れ、
決してその境界を越えようとしなかった。
影の森には、影が生み出す
恐ろしい存在が住んでいると
信じられていたからだ。
しかし、ある日、光の谷に住む
若い娘リラは、どうしても
その境界の向こう側に
惹かれる何かを感じた。
彼女は幼い頃から、影を見るたびに
「影がなければ光はわからない」
と感じていた。
皆が影を恐れる中、リラだけは
影が持つ秘密に興味を
抱いていたのだ。
ある夕暮れ、リラは一人で
影の森へと足を踏み入れた。
森の中は静かで、木々が重なり合い、
闇が深くなるほどその静けさは
増していった。
しかし、リラは怖くなかった。
むしろ、森を歩くたびに、
自分の中に眠っていた不思議な感覚が
呼び覚まされていくのを感じた。
彼女はそのまま進み、
森の奥へと足を進めた。
しばらく進んだ先に、小さな湖が現れた。
湖面は森の闇を映し、黒く沈んでいた。
しかし、リラが湖に向かって
歩を進めると、突然、月の光が
雲間から顔を出し、湖全体を
柔らかな光で照らした。
その瞬間、湖面に映っていた闇は消え、
美しい光の反射が彼女を包み込んだ。
リラはその瞬間、気づいた。
影は光がないと生まれない。
そして、
影がある場所には必ず光が存在する。
彼女は湖に映る自分の姿を見つめながら、
心の中で静かに言った。
「影を恐れる必要はない。光があれば、
影もまた存在するもの。
少し角度を変えれば、
その向こうには光が必ずある。」
リラはその言葉を胸に、
光の谷へと帰った。
彼女は皆に影の森での出来事を話し、
影はただの闇ではなく、
光の証でもあるのだと説いた。
彼女の言葉に少しずつ光の谷の人々も
影を受け入れるようになり、
影と光が共存する
「二面の世界」は、
より豊かで深い場所となった。
そしてリラは、自分の心に宿る
光と影を大切にしながら、
前を向いて歩き続けたのだった。

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なかなか素敵な物語ですねぇ!そして深く考えてしまう作品です!世の中、森羅万象には相対性は必ずある物ですよね!光があれば、必ず陰もある。逆もまた然りですかね[笑う] 良いお話しをありがとうございます♪♪
フォアグラ
確かに光ある所に影は必ず生まれますよね 素敵なファンタジーでありながら 真理をも表す素敵な物語をありがとう! お疲れ様です!